SANEDOME jotdown

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 深夜だけどおかしいと思ったのでおかしい点を列挙していくよ!!

思いやりを要求する人と“繊細チンピラ”の共通点 | All About News Dig(オールアバウト ニュースディグ)

1. 何故元ネタにリンクしないのか

 小野ほりでぃさん言うところの「繊細な自分を傷つけないように他人に要求する“繊細チンピラ”」の行動様式も彷彿とさせる。

 タイトルにまで使った上に、ここまではっきり言及するならまだ存じない読者諸氏のため該当記事にリンクの1つでも張ればいいと思うのだが、何故かない。もしかして嫌いなのか。嫌いなのか。

2. そんな言わなきゃ分からないことか?

「思いやりを持ってほしい」というフレーズは結局、何がしてほしいのかがわかりづらい。だからこそ、こじれる。言った側はそんなつもりはなくとも、言われた側は過剰な要求をされたり、偉そうに主張されているような気分に陥りやすい。

 後者は現代日本人の病理みたいなものとして、例としてベビーカーを巡るトラブルの(あるいは、他人の感情を刺激してリアクションや注目をひきだすことを目的として実際にはなかった、あるいは不適切な誇張を加えた)エピソードに触れておきながらその言い草はなにか。言われなくても大体明白じゃない!! 言われなくても大体明白じゃない!! それともあなたは何か、仮に今から医大に行って凄く難しいジャンルの手術をやる外科医になるための勉強をするとして「『心臓外科』というフレーズは結局、どんな作業がなければ成り立たないのか分かりづらい。だからこそ、患者が死ぬ。指導側はそんな複雑な治療をさせたつもりはなくとも、新人は過剰な要求をされたり、偉そうにアカハラされたりしているような錯覚に陥りやすい。また、自称・“神の手を持つ医者”が、独りよがりで、似非科学の権化のようなケースも多々あることも、話をややこしくする。」とか言うんですか!?

3. 誰もそんなことは言っていない

「とても驚いた。東京五輪ではニュージーランドから同じような入れ墨をした選手がたくさん来る。日本人は自分たちと異なる伝統に思いやりを持ってほしい」と話した。

 この、産経から丸写しっぽいが何故か引用の態じゃない発言、英語圏でいくつかニュースソースを当たって元の表現を推測してみたらこんな表現だった。

Erana Te Haeata Brewerton Banned From Japanese Bathouse... | Stuff.co.nz

"I'm not used to being treated like that,'' Brewerton told the AFP. She said her ''ta moko'' tattoo identifies her.

''My moko tells other Maori where I am from.''

Brewerton told Kyodo News she was upset by the inference her tattoos were connected with organised crime and said she hopes the incident would raise awareness of moko kauae.

"The world has opened up now, with the Internet and the way we travel around the world, so we just need to be aware of others' traditions," she said.

  これらと同様の表現はほかのいくつかのニュースサイトでも見られる。

Radio New Zealand : News : Te Manu Korihi : Insulting to call moko a fashion statement

"I'm not used to being treated like that," she told AFP in a telephone interview. ''My moko tells other Maori people which tribe I am from."

 これもStuff.co.nzからの引用前半と大体同じ。

Ms Brewerton said it was the disdain on one of the staff members face that upset her the most. She did not blame the facility's manager but did object to a statement it would not welcome people with a tattoo as a fashion statement.

Such behaviour could embarrass Japan on an international stage, she said.

 こちらが先程の記事にはないファッション云々のくだりだと思われる。

 もう英語がある程度出来る人はヤバいとお気づきであろう。そう、「思いやり」に相当する部分で使われている表現は(選手云々が行方不明なのが気になるが)be aware ofなのである。気付く・知る・認識するといった意味を持つフレーズである。

 この原文における言葉づかいを踏まえて思いやり云々のくだりについて見てみると凄い。前半部が突如小町スメルを放ってくるし、後半部が全く意味不明になる。

入れ墨は「母親や先祖を表す家紋のようなもの」だから、受け入れてほしいという意味なのか。それは「公共浴場では入れ墨NG」という日本の文化を無視していることにならないのか。なんともスッキリしない。

 

でも、「施設では、入れ墨はファッションだと言われた。そのことに怒りを感じている」を受けての「思いやりを持って欲しい」だと、印象がだいぶ変わる。おっしゃる通りだと思う。さて、どちらの意味だったのか。はたまた、全然違う意味なのか。

 4. 意味とは、そして産経編集部内で許容される女性観とは(※とばっちり)

 さらにこの後半部のファッション云々(一応これも産経新聞の記事からの引用である)、もしラジオニュージーランドの記事で紹介されていた発言に基づくものだとしたらそもそも完全な翻訳ミスである。fashion statementというのはファッションを用いる言葉によらないstatement、すなわち声明や供述で、特に何らかの反応を引き出すことを狙ったものを意味する。

 すなわち、別にBrewertonさんは刺青をファッション扱いされたとも思っていないし、おそらく入浴施設側もそんなことは特に言っていない。その上、Brewertonさんは刺青を暴力団員によるfashon statementと暗に同類のものとされて傷ついた訳ですらない。本人が認める通り、彼女の刺青はマオリとしてのアイデンティティを二重の意味で示すfashion statementそのものであり、それゆえ件の浴場を利用できない状況に抗議しているのである。

 さらに言えば、彼女は怒ってすらいない(儀礼的な表現であろうが)。従業員たちの軽蔑に満ちた表情にupset(カジュアルには怒りを表現するのにも使われるが、辞書的には狼狽・心配を表す)させられたが、マネージャーの責任を問いたいわけではなく、fashion statementとしての刺青を受け入れないという発言に抗議していると述べている。そもそも刺青をファッションだと呼ばれた訳ですらない(多分)上に、その発言に対してはただ抗議したいだけという訳だ。

 もし仮に、本当に仮にだけど、単語のニュアンスを全て分かった上で責任を問う(原文ではblame)だとか抗議する(同じくobject)といった単語に「怒りを感じている」なんて表現を当てたのだとしたら…なんというかまあ…うん…こういう記事でこんな話をしたくないけど、産経が女性や外国人(特に非白人)の話をしてるだけでいつも凄く嫌な予感がして、思いのほかまともだったケースなんてめったにないね…!!

5. 言わなきゃ分からないどころか言ってるのだが

「思いやりを持ってほしい」というフレーズは結局、何がしてほしいのかがわかりづらい。

 だから言ってるから!! 刺青を理由にした浴場利用を禁止する声明に反対ってはっきり言ってるから!!

似たような価値観を持っているもの同士で、「結局は思いやりだよねー!」「だよねー!」楽しく盛り上がる分にはそれはそれでいい。思いやりの中身なんて掘 り下げなくても、なんとなく意味のあるやりとりをしたような気分にもなれる。いえーい! 俺たち、最高の仲間。いえーい!


  でも、「文化の違い」に直面したら、そうはいかない。

 あれ…? 急にまともになった…?

“思いやり”なんて曖昧な話を持ち出しても、らちがあかない。何にどう困っているのか、どうしたいのかをできるだけ具体的に話し合ったほうがよほど建設的だ。思いがけない解決策を引き寄せるのは思いやりではなく、具体的な「悩み」なのだ。

 て思ったらこれだよー!! 話してるからー!! この上なく具体的に話してるからー!!

6. もとはと言えばスタート地点がひどい

 浴場・サウナ・プールにおける刺青を理由とした入場禁止という慣習自体、そもそも身なりや外見に基づく差別である。暴力団排除という、もっともらしく反対しづらい理由が付いているだけに過ぎない。刺青がなければどんなトラブルも許すのかという話である。むしろ、刺青の有無のみに依存して暴力団員かどうか・粗暴な客かどうかという判断を厳密につけないならば、暴力団の完全排除または他の客の保護という題目からは遠ざかってすらいる。

 ましてや、今こうしてBrewertonさんの発言によりマウイには(全員ではないにせよ)暴力団と関係なく隠しづらい部位に刺青を入れることが明確になった以降、このルールへの固執は人種差別的な風味を帯びずにはいられない。文化だ伝統だという掛け声で全てが許されるべきではないという主張は、そっくりそのまま業界に向けられるべきであろう。

7. 問題の階層が問題

(とちゅう)