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いろんなものをLGBTに並べがる人たち

新春暴論2016――「性的少数者」としてのオタク / 山口浩 / 経営学 | SYNODOS -シノドス-

 眠いので簡潔に指摘。

  1. クィア枠入りではなにかまずいことがあるんですか?
  2. 「おたく」と一口にいっても内容は多様で、それこそ二次元絵やフィギュアにほとんどなじみのないシスヘテロ既婚者まで含まれるんですが、これを全部性的嗜好を同じくするグループかのように論じるのは雑。
  3. sexual orientationをparaphiliaと同一視されて憤るのを指してほらお前ら性的嗜好を見下してるんだーとか言うの、完全に「朝鮮人といわれて怒る自称・反差別活動家は差別主義者だ!!」論法。やめろや。個人的に特定カテゴリの人をどう思うかとは全く関係なく負のレッテルとしての含意は認知できるし、だからこそなおさら腹立たしいものだろうし、それにそもそもLGBTだからパラフィリアではないとは限らない。

起きたのでぼちぼち詳細

 といっても、ここまで書いてしまうともうあまり足すこともないのだが。

クィア枠補足

 一応定義を示しておく。

LGBT Terms and Definitions | International Spectrum

Queer: 1) An umbrella term sometimes used by LGBTQA people to refer to the entire LGBT community. 2) An alternative that some people use to "queer" the idea of the labels and categories such as lesbian, gay, bisexual, etc. Similar to the concept of genderqueer. It is important to note that the word queer is an in-group term, and a word that can be considered offensive to some people, depending on their generation, geographic location, and relationship with the word. 

 文中に出たので参照用:

Genderqueer: A term which refers to individuals or groups who “queer” or problematize the hegemonic notions of sex, gender and desire in a given society. Genderqueer people possess identities which fall outside of the widely accepted sexual binary (i.e. "men" and "women"). Genderqueer may also refer to people who identify as both transgendered AND queer, i.e. individuals who challenge both gender and sexuality regimes and see gender identity and sexual orientation as overlapping and interconnected.

おまけ: 性的マイノリティのコミュニティ内タームじゃないほうのクィアの定義

 読んでの通り、クィアすなわち性的マイノリティである。論ずるべきは既存の(それなりに流布した)性的マイノリティの枠組みにOを加える試みではなく「クィアとしてのおたく」「おたくのクィア性」であろう。実際、たとえばqueer geekで検索すると、英語圏におけるギーク文化と性的マイノリティ文化の隣接性、多様な重なり合いを見ることができる(上位検索結果の大半はギーククィアの自称を重ねただけの個人ないしイベントに関するコンテンツだが)。

 というか、ぶっちゃけ本気でおたくを性的マイノリティとしてプッシュしたいならば、書くべきはシノドスの記事ではなく性的マイノリティの自助・交流団体への参加申し込みであろう。筆者がおたく自認ならの話だけど。検索(例1例2)すればよりどりみどりってほどでもないがいろいろあるぞ!!

 そして、もしも筆者が旧来の性的マイノリティ自認でもいわゆるアライでもなく、その上おたく自認でもなかった場合、どういう形をとるにせよ件の試論は倫理上のリスクをはらむ。おたくでもなく、性的マイノリティでもなければ側に立つ気もない者が突然外部から両者に連携を求める構図が生じるからだ。(あまりセクシャリティに焦点を当てない形での)よくある「おたく」迫害、とりわけ任意のジャンルの愛好家は社会性を欠く、幼児的であるといった非難のエンパワーメントを装ったバリエーションであるといっても言い過ぎではないだろう。

変態補足

小児性愛やレイプなど、実行すれば犯罪となる行為を描いたマンガ、ゲームなどの創作物を消費する一部のオタクは、これにより自らの性的嗜好を実行に移すことなく充足させ、社会と共存している性的少数者といえる

 status quoな適応の度合いだけを見てマイノリティの権利を如何すべきか語るのは、控え目に言って不公平だろう。当該グループの地位を向上させたいならば、尚更のことである。犯罪歴のある者の扱いについて考えてみればよい。

 また一方で、小児性愛やレイプ願望、そして引用部では挙がっていないが近親相姦についても、おたく文化がそうしたセクシャリティ、あるいはセクシャリティを持つ人を包括する括りとは言い難い。「実行に移すことなく充足させ」ることのみを前提としてもなお難しい主張であろう。

 なお、パラフィリアと同性愛を同一カテゴリで括ること(するとほぼ必然的に同性愛はパラフィリアの下位概念になる)に多くの人が直感的に、少なくとも生理学的な不適切さを感じるところだろうが、実際にそれを裏付ける研究もある。

Is Homosexuality a Paraphilia? The Evidence For and Against

(とちゅう)