SANEDOME jotdown

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謎は結局全体的に前より深まった

ウィキペディアを使って身分詐称を試みたとされる男性の記事、ウィキペディア(※日本語版)から削除されていた

 タイトル通り。15年1月のことだった。

Wikipedia:削除依頼/ジョシュア・ガードナー - Wikipedia

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なぜ消えたか

 削除理由は特筆性だが、投票の過程でそもそも表題の「ウィキペディアに自分のページを作り、それを根拠に嘘の肩書を認めさせた」とされた出来事が存在したと確認できない旨が指摘されている。hoaxそのものについての英語版記事(なんだか体裁的に問題の人物の伝記的ページっぽくなっているが)には「学生ジャーナリストが調査のうちにウィキペディアの削除議論ページにたどりつき、そこで彼の本名を知った」とあるが、指摘されているように問題の人物がメディアで話題になるより前の議論なので「ナンセンスの疑いが濃厚」みたいなことしか書いてない(ちなみに名前は元のページ名にある)*1。そして削除されたはずの記事がある…と思ったらhoaxの方にリダイレクトされる。

 日本とあちらでは刑期を終えた犯罪者のスティグマが(主には法的な意味においてだが、それ以外の部分でも)異なるというのはそうだし、ティーンに近づこうとした性犯罪者だからなんとなく世論が厳しいというのは少なからずあるだろう。

結局どういうことか

 データベースに載るようになった2003年の罪状はfourth degreeのcriminal sexual conductのうち強要・暴力よるもので、まあ雑にいえば言えば痴漢である。英語版で言及されている2002年の犯罪がおそらくそれに当たるのだろう。スティルウォーターエリアハイスクール(以下SAHS)の出来事は保護観察違反ではあったが、学校スタッフがそばにいたこともあって特に何も起こらなかった。しかし、2006年7月にはさらに3件の性犯罪で逮捕・起訴されている。15歳男児が被害者となった1件は2005年の夏に起こり、またカーバー郡の判事いわく、SAHSの報道を見てチャスカハイスクールの生徒が同じ偽の肩書で接触してきた旨を訴え出た(同じ事件かどうかは不明)。

 ウィキペディアの記述は2010年の釈放予定に関する記述で終わっており、彼が今現在どうなっているかについては言及がない。予想されたことだが、似た名前の人物が多すぎて、今現在(あるいは釈放直後)の彼がどうしているかについて報じているニュースを見つけることはできなかった。トリビア的な扱いとしても、彼を主題に据えたオンラインの記述は(消えたウィキペディアの記事を機械的に丸写ししたタイプのものを除けば)日本語圏ではあまり残っていないようである*2

 英語版の記事がいつ誰によって作られたかは、削除されてるわリダイレクトになってるわで分からなくなってしまった(割と簡単に調べる手段があるのかもしれないが)。少なくとも2006年1月に報じられたSAHSの事例においては、誰もウィキペディアを見て彼を本物だと思わなかったのだろう。

 しかし、それ以前にあったと思われるチャスカハイスクールの事例(多分性暴力か、その未遂を伴っている)では上手いこと利用したかもしれない(ソース記事はリンク切れ)。しなかったかもしれない。記事作成は本人の意図によるものかもしれず、第三者によるのかもしれない。仮に他人の意図によるものだとして、チャスカハイスクールでの出来事が引き金だったかもしれないし、関係ないかもしれない。本人の意図によるものだったとして、それは単に彼のナルシシズムの表れないし燃料になるもの(顔写真を見て金髪碧眼なのでナルいみたいに思ってしまった節がないわけでもないが、SAHSでの事例では英王室とのつながりを強調していたようなので、まあ言っても差支えないだろう)かもしれないし、犯罪のためだったかもしれないし、その場合も性犯罪以外を狙ったものかもしれない(たとえば、保護観察下からの脱出とか)。結局オンラインのソースが消えうせたせいでよく分からない。

 ただウィキペディア的には無価値で、世間的には忘れられた出来事だとしても、この件に言及する価値はある。それはとりもなおさず、少なくともSAHSでは問題の詐称記事は機能していなかった(削除済みだし)し、そもそもそういう目的に使われなかったようだよという新事実で上書きするためである。削除議論ページで十分かもなーと思わなくもないが。

*1:100ポンド云々は、おそらく英国紙幣の肖像のことを指した冗談だと思われる

*2:はてな内でいえばhttp://d.hatena.ne.jp/yomoyomo/20060116/wikipediaが見つかったが、リンク先のブログが消えていて詳細が分からない状態になっている