SANEDOME jotdown

大体週休一日

ポリアンナ系男子、あるいは痴漢多すぎ世界死ね

(※一応、全般的にフラッシュバック注意)

痴漢に関する「勝手なイメージ」を嬉しそうに取り上げるJ-CASTさん

ネットで有名「近鉄乳首おじさん」逮捕の衝撃 福山雅治似の市職員がしていたこと- 記事詳細|Infoseekニュース

 このタイトルからして…な~にが「福山雅治似」じゃという感想なのだが。

この男、「乳首おじさん」と呼ばれていて、女性の顔を電車内やホームでジッと見ながら両手を使って自分の両方の乳首をいじる、地元ではちょっとした有名人。その堂々とした姿からヘンタイなのか、受け狙いなのか分からないと議論にもなった。

  1000歩ぐらい譲って受け狙いならば凝視しながら乳首を弄っても許されるとして、逃げ場のない走る列車上でその「受け狙い」を延々押しつける時点で割と顰蹙物なのでは。

「こいつ うちの顔見ながら両乳首いぢってた。これ撮ったん麻衣子で右にうち座ってんねんけどガン見具合えぐない?」
「さっきから目ーあったら 乳首見せてくんねんけどこの人。 とりあえず電車くるまで 三分くらい凝視しといた」
「電車乗っててめっちゃ視線感じたから窓の外見たら タンクトップから両乳首出してこっち見ながら指で一生触ってる噂の乳首おじさんおった。何してるんですかゆーたら何もしてませんけどやって。へ?へ?何もしてないの基準おかしいやろ。逃げよった~きしょすぎ」

などといったことがつぶやかれていた。

  アウトだよね? 刑法にこそ触れずとも、凝視の時点でかなり相手を居心地悪くさせてるよね? ぶっちゃければ「『乳首おじさん』としてネットで話題」にする行為はある種の緩慢なリンチであり、凝視や露出や痴漢で迷惑を被った女性とその連れ以外も相当一緒にいて不快だったゆえのことだし、話を聞いただけの人たちもよろしからんものだと思ったってことだよね?

 まあ、その語りの内容は必ずしも、他者の性的自由を脅かすことをネガティブなものととらえてはいないのだが。

「乳首おじさん何がすごいって指がすごいの。やってみればわかる。この腕を上げる時のスムーズさと人差し指のこのスピードはたくさんの練習が必要だよ」

「乳首おじさんとして筋を通していればよかったのに・・・」
「しかし最後の決まり手が局部出しとはとても残念です」
「乳首アピールだけならあと10年でも20年でも名物おじさんで済んだのにな。何がハードルを越えさせたのか」

  むしろ「ハードルを超えた」(実際には超えていたのだが)性犯罪と比較して賞賛する声すら見受けられる。

性暴力の現実からこぼれおちる人たち

 なぜ突然、こんな糞しょうもない記事からひどい発言を長々と引用したのかというと、先日これを読んだからである。

www.theguardian.com

 読んだ感想としては「EverydaySexismによくあるやつや…」「Wasp-y prettyな女子も性暴力には同じぐらい遭ってると思うで…」なんだけど、今特に読んでほしいのはここ。電車内で何者かに精液をかけられていたことに帰宅後気付いた後の段の話である。

Later I would find out that the guy rubbing up on you in the subway isn’t just an asshole – he has a disorder. In the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, the American Psychiatric Association describes “frotteurism” as “recurrent, intense, or arousing sexual urges or fantasies, that involve touching and rubbing against a nonconsenting person”. There are online forums for men – because, let’s be real, frotteurs are almost exclusively men – who rub on women and girls on the train, in bars, wherever they can do it while getting off unnoticed.
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They have handles like “Bum Feeler” and “Rock Hard”, and share stories of their exploits and pictures of the women they have surreptitiously dry-humped. Some give advice, such as backing away occasionally, so your victim gets the impression that you’re working hard not to touch her and that any contact is the fault of the crowd.

“Women are forgiving if you can make it seem like this,” Rock Hard writes. “Almost like you can’t help it, not like you’ve preyed on them like a piece of meat.”

  日本でもあったあった、痴漢や盗撮愛好者専門の掲示板の話…!! 他の女性になり済まして掲示板に依頼を書き込んだなんて話もあった。

全文表示 | 女性から「痴漢されたい」という書き込み なりすましに騙され、実行した男が逮捕 : J-CASTニュース (またJ-CAST…)

 そしてこの2つ下(3件目)にまた痴漢愛好者向けを謳ったサイトが出てくるという地獄。もう日本というか全世界が一度死ぬべきでは。

騙しなし!!痴漢掲示板とかオススメの痴漢サイトBEST5 - 痴漢**.com

chikan****.com › その他

2015/09/23 - 痴漢体験談や画像・動画の投稿サイトなど、痴漢マニアとしては魅力的なコンテンツが満載です。くれぐれも個人 ... しかし、痴漢待ち合せ掲示板経由の事件が頻発して以降、当局からの指導により新規の書き込み禁止と過去ログのみの閲覧に利用が制限されてしまった模様です。いやぁ、 ... 2015.10.01 Thu 痴漢OK娘の見分け方 そのシグナルを見逃すな!! 痴漢逮捕. 2015.09.25 Fri この人痴漢です!!と叫ばれ ...

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  騙されろよ!! ってか、おすすめサイト当局に指導されちゃったのかよ!! ここも指導されて消えればいいのに…まあ、踏むとマルウェア食わされたり架空請求されたりする、別の意味で悪質なサイトである可能性もなきにしもあらずではある。むしろそうであってくれ。

  一方で先日は何気なく見かけて、興味深く拝読したブログ記事にこんなコメントがついていたりした。

blog.plutan.org

id: sundansuw

このような事件に巻き込まれる極わずかな確率よりも、
キチガイフェミババアに育てられることのほうが子供に悪影響であることは明らか。
 
子供のためを思うなら、あなたが子供に関わらないのが一番ですよ

http://blog.plutan.org/entry/2016/05/10/180728#comment-6653812171395652705

  この発言者はある意味乳首おじさん以上に「ネットで有名」な人物で、まあ一方ブログの本文の方も、今まで何度となく見てきた子供時代の性暴力・連れ去り(未遂)・セクハラの体験談の典型的な例である。こんな感じのコメントばっかりしてる人なので、多分その過程でこの手のテンプレ被害体験談を山のように目にしてきたに違いないのだが、にもかかわらず「極わずかな確率」だそうだ。痴漢愛好家サイトの常連共と対消滅すればちょうどいいのに…(←ここまでテンプレ)

 もうひとつ思い出すのは、昔はてな内で性暴力に関する議論が非常に盛り上がった時のことだった。その際に誰か、比較的セクシストでないと思われた男性が(多分今はもうはてなidのないid:sionsuzukazeだったと思う)(id:は敬称)路上で起きる性暴力は少ないという統計を持ちだしてきていて非常に呆れた記憶がある。そりゃそうだろ君、犯罪者の立場になって考えてみろよと。すれ違いざま、あるいは追い抜きざまに乳房や下半身を触って立ち去る、あるいは局所を露出しながら通り過ぎるタイプの性暴力は夜間の路上で多いだろうが、性質上加害者を立証するのは難しく、一旦加害者を捕まえ損ねれば届け出されずに済まされるケースが多いだろう。一方、(広義のものも含む)強姦目的ならば、路傍の死角で待ち構えて物陰に引きずり込むか、あるいはターゲットがやってくるのを待つであろう。あるいはいわゆるハイエース。または、そもそも帰宅途上の襲撃によらない手段でターゲットと加害者だけになり、他人に邪魔されない状況を作るだろう。理由は極単純で、身を隠す手段が乏しいところでは日没後でもターゲットの不意をつけず、路上で性行為に及べば車に轢かれるし、目撃や善意の第3者による介入のリスクも増すためである。

 この事例単独では善人すぎるのも考え物だなーという感想だったし、今改めて見直してもあまり変わらない。では一般的傾向として、性暴力の氾濫の否認とはそれを口にする人、特に男性にとってどのようなものなのであろうか。何が彼らをそうさせるのか。ネットで女性を狙って暴言を吐き続ける奴は大概実際的な性体験に乏しいから…といった「セクシズムにセクシズム返し」は論外である。まず1つ言えることとして、単に理性的で客観的な視点を担保しただけという見方はあり得ない。言うまでもなく、この手の議論は大半の男性は自身がゆきずりの性暴力のターゲットになる頻度が相対的に少ないため無関心であるという仮定に基づいて行われる。「人として生まれた以上、頻繁な痴漢やセクハラからは逃げられない」という命題が圧倒的多数の男性にあてはまらないのは、指摘するべき事柄どころか前提そのものなのである。そして「当の女性たちが否定しているから」は理由にならない。否定の理由が数ではなく価値観に関するもの(しばしばある)である主張がよく検討されないままカウントされている場合もあり、そういうケースは尚更である(価値観は「どこから性暴力・セクハラとするか」の判断に影響するが、本人が自他の経験を痴漢ないしセクハラと認知する姿勢を示した上で「騒ぐのはみっともない」「被害者が悪い」などと述べる場合も無視できないほどに多い)。

突然ですが仮説の時間です

 とはいえ、実はもういくつか有力なメカニズムに見当が付いている。そして、それらはある程度科学的な評価が定まっている。

  1. sexual entitlement
  2. 発信内容の信頼性、評価、あるいは発信の注目度における男尊女卑的な認知バイアス
  3. ポリアンナの原則

 1つめ、sexual entitlementは男性の性的な特権(Hanson et al., 1994)を意味する。そのまんまだ。ナショナルジオグラフィックに載ったRachel Jewkesのインタビュー記事によれば、世界中のほとんどの地域にはレイプが蔓延している。そして、最大の動機として挙げられているのがこの性にまつわる特権意識であり、そこでもう少し詳しくこのような定義が与えられている。

Sexual entitlement means feeling that you ought to be able to have sex with a woman—essentially, if you want it, you can have it.

 女性とセックスができるようになるべき/されるべきという感覚、本質的には「したい時、必ずできる」。裏返せば、これはそのまま性暴力における被害者非難の原理になるという(対偶を取った時には多分「女性にとっての『したい時、したい相手と性的な行為』をする権利」や「『性的な行為』と言った時、必ずしも狭義のセックスを意味しないという価値観の枠組み」やジェンダークィア的なものなんかも見えるはずだが)。

 2番目はそのまんま()で、性暴力の当事者になったことのない男性の意見が過剰に重く扱われるために話がおかしくなるのはもちろんのこと、加害者にしばしばありがちな被害者が乗り気であったという認識(恐ろしいことに、告発してきた被害者への逆恨みと両立する)が加わると恐ろしいことになる。実際ある程度なっているだろう。3番目は、肯定的な表現を好み、否定的な表現を避けるという人間の性質についてである。2015年では10の言語で確認された

つまり、性暴力における男ポリアンナのみなさんを見ていたのだ

(いや、J-CASTのライターやのんきなツイートをした人の性別については分からないし、そもそもツイートは文脈を欠いているため皮肉の可能性もあるけども…)

(ついでに言えば非男性の側のポリアンナ頻度も相当なもんだし十分有害だと思われる)

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*1:一部引用者により伏字