SANEDOME jotdown

大体週休一日

ストーカー遭遇談の場に蔓延する被害者非難

すごい被害者非難ブームを見たので不快になりつつもメモせざるを得ない

嫁がストーカーを爆誕させた

はてなブックマーク - 嫁がストーカーを爆誕させた

 被害者非難や妻に対するいたわりのなさが指摘されてない訳ではないが、ブックマークコメントの大半が読点のおかしさに集中しているという残念な状況。

ストーカー被害に3件遭った経験からわかった「あいつら」を寄せ付けない方法 - トイアンナのぐだぐだ

本質的には嫌な相手を早い段階で拒絶できる自尊心を手に入れるのが一番の解決策

 これいいね!! どこがいいかと言うと、嫌なことを嫌とはっきり言えない性格かつストーカーに遭ってる人が読者にいたとして、まずまともに反論できないだろうという点。明らかな誤りであるにも関わらず欠陥を悟られづらいところが最高。そしてついでに自著の宣伝にもなっている。それはそうとして、コメント欄の偏見博覧会ぶりもなかなかの見ものである。

ストーカーに遭わないために気をつけるべき3つのチェック項目 - LAURIER (ローリエ)(1/2)

  もはや被害者非難を飛び越えて、仮に効き目があるとしても目茶苦茶実践しづらいアドバイスの山である。親しみやすいとか性格よさそうなんてのは勝手に顔立ちや服装から判断されるもので、職場に服装規定があればファッションの工夫で近寄りがたくすることすらできない。最後の真面目云々に至っては完全に読者をヨイショする機能しかねえわ!! 話し合いや真心で解決しようとするのは下の下策というのは事実でも、それを被害者の日頃の振る舞いにまで演繹することは無茶と言わざるを得ない。

おまけ: ストーカーの素顔、警察からのアドバイ

 テーマとずれるが、紹介したアドバイスが仮に被害者非難的でなくてもお勧めできない理由をいくつか挙げておく。

Stalking a problem at college, awareness needed | Opinions | kykernel.com

 ケンタッキー大の学生新聞、ケンタッキー・カーネルの2012年のコラムに出てきた情報を見てみよう。

  1. ストーキングはありふれた現象である(少なくとも合衆国では)。Centers for Disease Control and Preventionによる無作為調査では、女性の6人に1人、男性の19人に1人がストーキング被害に遭い、不安を感じたことがある。
  2. しばしばストーキングに明確な動機は存在しない(専門家はいろいろ推測するが)。
  3. 身近で本来信頼できるはずの人間もストーカーになる。そして、パートナーないし元パートナーの方がより暴力的な脅迫をする傾向にあり、また脅迫を実行に移しやすい。もっとも危険なタイプが暴力的な男性の恋人である。
  4. 無視も対峙もストーキングをやめさせる決定打になるどころか、より危険な状況の引き金になりうる。

 紹介したいずれの記事も1番についてはクリアしているが、3番の視点を完全に欠いていることが分かる。

 お次は警察からのアドバイスの例。チェシャー警察によるケーススタディ(実在の被害者による体験談なのか、複数の事例を合成したものなのかは不明)。これも加害者は(ちょっとサイコパスっぽい特徴を持つ)彼氏であり、転居を機に行動がエスカレートしたと書かれている。3つのアドバイスに欠けているもう1つの視点として、リベンジポルノやキャリア妨害のための中傷についても触れられている。最後は警察に相談がおすすめなのは御愛嬌。

Stalking victim case study - Cheshire Police

「stalking prevention police」みたいな感じのキーワードで検索すると警察によるものもそうでないものも含めていろいろ出てくるが、アドバイスはいずれもすでにストーキング被害が明確な人に向けてのものである。

Advice for Victims of Stalking and Harassment - Cheshire Police

Stalking Frequently Asked Questions - Metropolitan Police Service

The Prevention of Stalking – UCA Police Department

 なんかどうしても「証拠を集めて警察に通報!!」みたいなのが多くて、「なるべく警察に関わりたくない場合」に「常に999番に通報できるように携帯を持ち歩きましょう!」とかあるのに笑ってしまった。

 一応、他にも周囲にストーカーの存在を周知する、通勤通学時に友達や家族の協力で一人きりにならないようにする、上司に頼んで職場に強盗被害を周りの建物に通知するアレを設置してもらうなどもある。どれも被害者非難がしみわたってる社会だとクソバイスの雨で終わりそうや…あとクラッキング被害に対する言及がある(あるが、実際被害に遭った際に警察に言って証拠が増える以上に何かいいことがあるかどうかは分からない)。